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2006/05/09

規則で締め付けても問題は解決しない

くるまこのみさんの記事より。

トラックのダブルタイアの締め付けですが、アウター側はナットで締め付けられているけど、インナー側はクリップボルトで締め付けられているので、インナーとハブとのネジを増し締めするには、極端な話アウター側のホイールを一旦外さなければダメ。ホイールを外すなら、当然ジャッキアップしなければならないが、積載状態で20トンを超えるトラックをジャッキアップするのには、乗用車用の簡便なパンタグラフジャッキなんか使い物になりませんよ。

お役所は机上の空論で無茶な規則を作ってしまう物とはいえ、今回のこれは極めつけの愚行と言えましょう。

そういう手順は抜きにしても、前例からすれば多分国交省の省令では、手締め以外の確認手段は認めない可能性すらあります。前例とは、一連の三菱ふそうのリコール処理方法を承認するに当たり、クリップボルト並びにハブナットの締め付けにあたって、一切エア工具の使用を認めずすべて手締めで行うように「指導」したということ。90N・m程度の締め付けトルクくらいしか要しない乗用車だったら「手締めのみ」でもまだ理解の範疇にあるけど、それより数倍の締め付けトルクを要求する物に対して「エア工具の使用を認めない」などというのは常軌を逸してる。あくまでも国土交通省は「手締め」に拘り、作業時間を確保しきれない現場工場で許可されていないエア工具の使用が発覚すると、何度もリコールのやり直しを命令してる。

この改正される省令ですけど、結局莫迦を見るのは健全経営の正直者ばかりになるでしょうな。小生の勤務先の上司たちに聞いてみると、少なくとも過去20年間にわたって、ウチではホイール脱落なんてやらかしてないとのこと。締め付けにエア工具を常用してトルクレンチ管理なんかやってませんけど。2004年12月に行政指導したあとも94件も脱落事故が発生したと言うけど、きちんと行政指導を守ってるところはどこも脱落してないに違いありません。で、脱落したところは、最初っから行政指導など知ったことかと守ろうという意志のないところに決まってます。

50~100km走行する毎に停車して増し締めしろ、ということだけど、ホイール毎に16本前後あるナットをトラック1台確認するのに10分やそこらで終わるわけがない。サービスエリアやパーキングエリアで必ずしも出来るわけではなく、そうなれば路上駐車でも良いんですかね?6月1日から、駐車違反が民間委託されて厳密解釈していくと言うのに、矛盾が生じますよ。

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くるまこのみさんの過去の記事に「そしてこの締め付けトルクは、ボルトが油で汚れていたりすると、いとも簡単にトルクオーバーになる」という一文がありましたが、実のところ、大型トラックの世界では故意にクリップボルトには油を塗布して締め付けることが整備上指示されていたりする。理由は、乗用車では少なくなりましたが、大型トラックではまだドラムブレーキが一般的で、そのうえ乗用車では考えられないほどにトラックのドラムブレーキはとても熱くなり、油っ気なしで締め付けられたボルトやナットは熱で固着してしまって、まっとうな作業では外れなくなるから。

以前書いたとおり、大型トラックのホイールナット用エアインパクトレンチは両手持ちの軽機関銃を連想させるほどに大きいけど、このエア工具を持ってしてもはずせないほどに固着する。で、無理矢理はずすためにアセチレンバーナーでナットを炙って無理矢理ゆるめたりとか。こういう規定外の作業がボルト破断の原因の一つになったりするのです。

ボルトに塗布する油と言っても、ネジ齧り付き防止用として流通してる耐熱グリス(和光ケミカルのスレッドコンパウンドなど)です。

少々、頭がボケていたのかな。

トラックのホイールナットは、JIS方式で8個、ISO方式で10個。クリップボルトが存在するのは前者のJIS方式。国土交通省の「点検・整備等の不良を原因とした大型車の車輪脱落事故の防止対策について~関係者に追加の対策等を通知・指示~」のところが詳しい。

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